こんにちは!今日の更新は、栄養学に関するオススメの本の紹介です。
栄養と健康というテーマは多くの人が関心が持っているため、世間には様々な情報が溢れかえっています。
しかし実は栄養学はかなり難しい学問です。そしてその難しさ故に誤った情報・誤解を招く表現などが頻出しています。
正直なところ、医療関係者でさえ間違っていることが多々あります。正確に情報を読み取るのはかなり困難ですが、その手助けになるような素晴らしい本があるので布教したいと思います。
"佐々木敏の栄養データはこう読む!"と"佐々木敏のデータ栄養学のすすめ"
今回紹介したいのは、佐々木敏先生の書かれているこの二冊の本です。
まずは佐々木敏先生の略歴を紹介しておきます。
東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野教授。女子栄養大学客員教授。京都大学工学部、大阪大学医学部卒業後、大阪大学大学院、ルーベン大学大学院博士課程修了。医師、医学博士。国立がんセンター研究所支所、国立健康・栄養研究所などを経て現職。いち早く「EBN(科学的根拠に基づく栄養学)」を提唱し、日本人が健康を維持するために摂取すべき栄養素とその量を示したガイドライン「日本人の食事摂取基準」(厚生労働省)策定において中心的役割を担う。一方で、大学院生らの運営による東京栄養疫学勉強会の世話人・講師を務めるなど日本の栄養疫学の発展に尽力する
「科学的根拠に基づいた栄養学」の第一人者の先生です。いくつか本を出していますが、上記の二冊は特に、世間に溢れる栄養と健康の情報を、科学的根拠に基づいた見方をするとどうなのかを示しています。
"佐々木敏の栄養データはこう読む!"は2015年出版、"佐々木敏のデータ栄養学のすすめ"は2018年出版です。
ということで、どんな本なのかレビューを書き記していきます。
どんな本なのか?
どちらの本も趣旨は同じです。世の中に溢れ混乱を招いている「食と健康の情報」を、疫学研究から読み解きどう受け取るべきかを示しています。
具体的に取り扱っているテーマをいくつか紹介しましょう。
"佐々木敏の栄養データはこう読む!"
・コレステロール値を下げるには
・トランス型脂肪酸の問題点
・あなた自身の減塩の必要性
・「早食いは太る」は本当か?
・「朝食をとらないと太る」はなぜ?
・プリン体と痛風の関係 怖いのはプリン体?ならばビールは禁物か?
・糖質制限と脂質制限やせるのはどちらか?
"佐々木敏のデータ栄養学のすすめ"
・卵は血中コレステロールにとって要注意食品か?
・夏バテに豚しゃぶのナゾ
・カドミウムとヒ素 日本のお米は危ないか?
・緑茶カテキンでどれくらい痩せるか?
・低糖質ダイエット 糖尿病の予防と管理に有効か?
・赤身肉に発がん性あり ならば避けるべきか?
どうでしょう、「栄養と健康」に関する話で、一つぐらい気になったテーマがあるのではないでしょうか。他にも色々なテーマがあります。
今はなんでも疑問に思えば検索して情報を集められる時代になりました。しかし、上記のような「栄養と健康」に関するテーマは、googleで検索しても上位に正しい情報が引っかかるとは限りません。
こういったテーマをまとめて、疫学的視点から結論を出している本は貴重です。ネット上だけの情報収集では誤った情報が上位に来ることも多いので、調べるのも大変です。
(試しに「早食い 太る」で検索してみました。ロクなものがヒットしないだろうなと予想しながら。するとなんと、検索結果の一位は日経電子版の佐々木敏先生へのインタビューでした。googleすげえな、しっかりそれ一位にするんだ・・・。)
オススメする理由
上記のような身近で問題になるテーマを取り扱いながら、栄養の情報をどのように見ればよいか?を伝えてくれます。
これがすごく難しい点です。例えば、研究があってグラフなんかついていて、根拠がありそうに見えても、実は間違っているというような情報もたくさんあります。
この本を読んだだけで、研究にツッコミを入れられる程にはならないかもしれません。しかし、栄養と健康に関する研究がどれだけ難しいことかというのはよくわかると思います。
この本を読み終えた頃には、「このサイトは一体何を根拠にこの情報を書いたんだろう」と気になるようになると思います。理解が深まれば、「いやこれは言い過ぎだろうな」「これは間違ってそうだな」といった判断もできるようになるかもしれません。
情報が溢れる社会なので、こういった取捨選択スキルを培うのは大事なことです。
これら二冊を読み終えて
この本を読んで特に印象に残った言葉があります。
"「効く」というには勇気がいる"という言葉です。「効いたという報告がある」と「効く」は違います。「それって効くの?」という素朴な疑問に答えるのは、本当はとても難しいことです。
でも世の中の栄養と健康情報を調べると、断定している記事やサイトばかりです。「ダイエットに効く」「健康に良い」「抵抗力を高める」「花粉症に効く」とかなんとか。みなさんも目にしたことがある表現でしょう。
また、栄養と健康の科学では、疫学研究の結果からわからないという結論がしばしば導き出されます。
薬のように治験や臨床試験の繰り返しでわかればわかりやすいのですが、食という分野は前提条件が複雑すぎます。その結果、研究がなかったり、研究があっても前提条件に誤りがあって使えなかったりして大変です。
結論が出ていない事象は、憶測や理屈からの推察で、好き勝手に話を書かれてしまいます。専門家としても、否定するだけの根拠もないので難しいところです。
情報を発信する側にいる人は、明らかになっていないことに対しては素直にわからないという結論を出してほしいなと思います。
まとめ
以上二冊の本の紹介でした。管理栄養士としては、全員に読んでもらいたい本です。
ちなみにどちらの本がオススメか。"佐々木敏の栄養データはこう読む!"は古いほうで、生活習慣病関連のテーマが多いです。その後発売された"佐々木敏のデータ栄養学のすすめ"は生活習慣病に限定しないもう少し広い話です。
テーマとしては、前者のほうが面白いかもしれませんが、読みやすさ的には後に発売されたほうかなと思いました。後者は、著者が「わかりやすさと科学的な正しさの両立を目指しました」と述べており、一般の方が読んでもわかりやすいように意識されていると思います。
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