こんにちは!今日の更新は、ビタミンKとワーファリンの相互作用についてです。
薬の相互作用は多数ありますが、ビタミンKとワーファリンは特に有名な組み合わせです。
ワーファリンはどんな薬?
ワーファリンとビタミンKの相互作用について書く前に、ワーファリンがどんな薬かを説明します。
ワーファリンが何に使う薬かというと、血栓塞栓症を予防するための薬です。血栓塞栓症とは、血栓が血流を止めてしまう病気で、止まってしまった場所によって脳塞栓症、心筋梗塞、肺塞栓症などに分けられます。
血液の凝固作用を弱めて、血栓ができにくいようにします。一般的には、血液をサラサラにする薬などと説明されています。
血液の凝固は、怪我の時等に必要な機能なので、出血時に血が止まりにくくなるという副作用があります。
ワーファリンの作用機序
相互作用について説明する前に、ワーファリンがどのように作用しているのかを見ていきます。
血液の凝固に関わる物質には、さまざまな種類があります。こういった物質は初めて見つけた人が名前をつけられるので、人の名前等色々な名前がついています。
しかし、血液凝固因子については発見された順番にローマ数字が割り振られており、数字で呼ぶことが一般的です。
これらの凝固因子の連携によって、血液の凝固反応がおきます。そして、この凝固因子の、2、7,9,10は栄養素のビタミンKが無いと働くことができません。
先程も書いたとおり、血液凝固因子の2,7,9,10はビタミンKが必要な凝固因子で、肝臓で産生されています。
ワーファリンは、このうちのビタミンKの働きを抑えます。
ワーファリンによりビタミンKの働きが抑えられると、肝臓での血液凝固因子の産生も抑制されます。
すると、トロンビンという血液凝固に必要な酵素もできなくなり、血液の凝固が抑制されます。これが、ワーファリンを服用した時に起きる体の状態です。
ビタミンKを多量に摂取すると?
さて、ここでワーファリン服用者がビタミンKを多量に摂取するとどうなるのか。
ビタミンKをたくさん摂ると、ワーファリンがビタミンKの働きを抑えきれずに、通常通りに血液凝固因子ができてしまいます。
つまり、血液の凝固を抑制できないということです。ワーファリンを服用しながらビタミンKを摂りすぎると、ワーファリンの効果が弱くなります。
ワーファリン服用者はどれぐらいビタミンKを摂って良いのか?
栄養学は定量的な考え方がとても重要です。今まで書いてきた話で、ワーファリンとビタミンKの相性が良くないんだ、ということはわかるかと思います。
しかし栄養学ではさらに踏み込まないといけません。「ビタミンKをどれぐらい摂って良いのか?」という問題です。
ここを曖昧にしておくと、「よくわからないから食べないで」という話になってしまいます。しかし、ビタミンKは緑黄色野菜全般に含まれており、どれも食べられないとなると健康の維持に必要な微量栄養素を摂取できません。
ビタミンKの摂取量については、国立健康栄養研究所という日本の研究機関で、ちょうど良い研究がありました。
系統的レビュー、システマティックレビューとも言いますが、質の高い論文数百を集めて検討したもので、科学的根拠としては最上位のものです。
下限量が一日150μg、上限量が325μgです。上限量はワーファリンの効果を弱める可能性が高くなる量ということで、わかると思います。
下限量があるのはなぜか。この研究では、ビタミンKの摂取量があまりに低いと、逆に凝固能力のコントロールが安定しないと述べられています。
ワーファリンが効きすぎて、出血が全く止まらないのも困りますからね。ビタミンKの量は少なすぎても多すぎてもコントロールを乱すということです。
納豆は何故ダメなのか?
ワーファリン服用者が絶対にダメと言われるのは納豆です。
何故納豆がダメなのか。
納豆のビタミンK含有量は、1パック(40g)あたり
糸引き納豆 ・・・ 240μg
ひきわり納豆・・・ 370μg
と他の食品に比べて非常にビタミンKが豊富です。
上記の数値に加え、腸内で納豆菌がビタミンKを産生します。
食品自体に含まれているビタミンK量が多い上、数値以上に腸内でビタミンKが産生されるので、納豆は残念ながらNGです。
緑黄色野菜は食べても良いのか?
緑黄色野菜はビタミンKが豊富な食品で、特に青菜類に多く含まれています。緑黄色野菜は食べられるのでしょうか。
日本人の食事摂取基準では、納豆を食べていない人のビタミンK平均摂取量は154.1μgです。
特に緑黄色野菜の制限を受けていない人たちがこれぐらいの数値なので、普通に食べるぐらいの量なら問題ないかと思われますが、食べ過ぎには注意が必要です。
他に制限するべき食品は?
ワーファリンの添付文書には、納豆の他に、青汁、クロレラが禁止食品として挙げられています。どちらも健康食品ですが、ビタミンKを非常に多く含むため、ワーファリン服用者には不向きです。
またその他の有象無象の健康食品たちは、正直なところよくわかりません。健康食品は日々出現し流行りが廃れると消えていく新陳代謝の激しい食品です。その中にはたまにビタミンKが豊富な健康食品があり、問題になることがあります。
しかし、全ての健康食品のビタミンK量が測定されているわけではなく、また販売されたばかりの健康食品は医療従事者でも十分な情報を持っておらず、判断がつかないのが正直なところです。
その他に緑茶は大丈夫か?と気にされる方が多いです。たしかに茶葉はビタミンKが含まれますが、ビタミンKは脂溶性であり、水には溶けないので抽出液にはほとんどビタミンKはありません。
抹茶のように、茶葉も含めて飲む場合はビタミンK摂取量が上がるので気をつけましょう。
まとめ
ワーファリンはビタミンKの作用を弱める薬であるため、ビタミンKが多すぎるとワーファリンが作用しなくなってしまいます。
緑黄色野菜は小鉢一つ程度、普通に食べる分には問題無いと思われますが、食べ過ぎには注意してください。
納豆は好きな方にとっては残念ですが、ビタミンKが多すぎるので食べられません。青汁、クロレラ等の健康食品もNGです。
0 件のコメント:
コメントを投稿