ナトリウムとは
ナトリウムは、原子番号11番の元素で、元素記号はNaと表記されます。多量ミネラルの一種であり、塩素と合わさって有名な食塩(NaCl)になります。
体内では、血液中の主要なミネラルとして存在し、体内の浸透圧の調整に関与しています。
摂取したナトリウムは小腸で吸収され、皮膚や便、尿などから排出されます。 皮膚から排泄されるナトリウムは、過度な運動や高温環境下でなければ少量で、便排泄も少量です。 ほとんどが尿中から排泄されます。
尿ということで腎臓が深く関わっており、腎臓が悪くなるとナトリウムの排泄が悪くなることがあります。 そういった場合では、食塩の食事制限を行うこともあります。
ナトリウムを多く含む食品
ナトリウムは、食品中では多くがNaCl(食塩)なので、 塩気を強く感じるものに多く含まれます。 薄味に感じても、汁物など総量が多ければ、ナトリウム量として多くなることもあります。
食塩相当量(g)では、
醤油小さじ1 | 1g |
味噌汁一杯 | 1.1g |
カップラーメン一杯 | 5.1g |
牛丼並盛り一杯 | 2.7g |
ハンバーガー一個 | 1.5g |
となります。
ナトリウムから食塩への換算
一部商品では、食塩量を少なく見せる工夫か、栄養素量がナトリウムとして表記されている事があります。 ただし、ナトリウム量=食塩量ではなく、ナトリウム量×2.54が食塩量になります。
(ナトリウム(Na)の原子量=23 塩素(Cl)の分子量35.5 食塩の分子量=23+35.5=58.5 したがって、ナトリウム1gは58.5/23=2.54gの食塩に相当することになります。)
例:ナトリウム2.1g→2.1×2.54=食塩相当量5.3g
ナトリウム540mg→540×2.54÷1000=食塩相当量1.4g
ナトリウムの一日に必要な量
日本人の食事摂取基準では、推定平均必要量が一応定められています。 推定平均必要量は、成人の男女で食塩相当量1.5gです。
推定平均必要量は定められていますが、日本人の殆どの人がこの量を上回っており、活用上の意味はほとんどありません。
どちらかというとナトリウムは過剰が問題になり、最新の2015年版食事摂取基準では、 目標量として男性8.0g未満、女性で7.0g未満と策定されています。
ナトリウムの欠乏症について
ナトリウムの欠乏症は通常の生活を送る上ではほとんど起きませんが、 大量の発汗や、嘔吐時に欠乏することがあります。 症状としては、倦怠感や食欲不振などがあります。
また、人体で浸透圧の調整など非常に重要な働きをしているため、 枯渇すると命に関わります。そこまで欠乏することはほとんど無いと考えられますが・・・。
ナトリウムは、どちらかというと食塩としての過剰が問題になります。食塩は多く取りやすく、例えば上記の表でいうと、牛丼一杯に味噌汁をつければ、 それだけで約4gの塩分となります。
他にも副菜がつくこと、男性であれば大盛りにすることなどを考えると、意識しないと目標量の達成は難しいと思います。
ナトリウムと生活習慣病の関わり
ナトリウムと生活習慣病の関わりについては、2015年版の食事摂取基準に詳しく記載されています。
まずは、食塩と生活習慣病の関わりで一番有名な高血圧について。食塩は血管内の浸透圧に大きく関わっています。 血管内にナトリウムが増えることによって血液の浸透圧が上がり、水分が多くなり血圧が上がります。
ただし、高血圧の原因は食塩だけではありません。 高血圧の発症は、食事や生活習慣等の環境要因に加え、遺伝要因も大きく関わります。 食塩の制限で血圧が下がる人もいれば、下がらない人もいます(食塩感受性)
また、食塩1gを制限することにより下がる血圧は、約1mmHgと言われており、これだけを見ると苦労の割には効果が薄いといった感じかもしれません。
しかし、食塩の制限に特にデメリットが無いこと、食塩感受性の高い人ならもっと下がる可能性があること、長い期間でみると1mmHg以上の効果が期待できる事などから、やはり食塩の制限は推奨されます。
目標量は食事摂取基準では男性8g、女性7gとなっていますが、研究等によると、一日6g程度まで食塩量を落とさないと効果がイマイチということで、 世界の主要な高血圧治療ガイドラインでは、減塩の目標は6g/日未満となっています。 WHOの一般向けガイドラインでは、減塩の目標は5g/日未満となっています。
他に食塩と関わりのある生活習慣病では、胃がんの報告が多くあります。日本人を対象としたコホート研究では、食塩摂取量が胃がん罹患率及び死亡率と正の関連を示すことが明らかにされ、 メタ・アナリシスでは高食塩摂取が胃がんのリスクを高めると報告されています。 ※日本人の食事摂取基準より
食塩過多による害が多数報告されている中、欠乏症はほとんど見られないことから、減塩はとりあえずしておこう的な感じになっています。 多く摂るメリットが特に無いため、血圧が高くない方でも、塩分の摂取量は下げるようにしたほうが良いかなと思います。
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