こんにちは!今日の更新は、平成27年4月から開始された制度である、「機能性表示食品」についてです。
制度の発足以来、スーパーなどで結構見かけるようになってきました。ということで「機能性表示食品」とはなにかを解説していきます。
機能性表示食品・特定保健用食品・栄養機能食品の違い
機能性表示食品の話の前に、よく似た制度で特定保健用食品・栄養機能食品についても説明します。
まず第一に食品に『機能』を表示するのは、法律上様々な制約があります。
制約がなければ、自社製品に好き勝手に「癌が治る」だとか「絶対に痩せる」だとか書けるわけです。
それが事実なら書いても良いでしょうが、事実でないならば詐欺同然なわけで、利用する側にとっても不利益です。
なので、食品の『機能』を表示する場合は以下の制度を利用する必要があります。
特定保健用食品
特定保健用食品(トクホ)は、特定の保険効果を表示した食品です。
「コレステロールが高めな方に適する」「食後の血糖値上昇を緩やかにする」といったような表示です。
体の生理学的機能に影響を与える成分を含んでいて、適切な摂取量も示されています。
その有効性・安全性については、当該食品を用いたヒト試験で科学的に検討されており、消費者庁に個別に審査を受けている食品です。
胡散臭い健康食品と違うのは、効果に科学的根拠がついているという点です。
ただし、期待しているほどの効果があるかと言えば話は別です。
例えば糖尿病を診断されている方が、「食後の血糖値上昇を緩やかにする」食品を常飲するとします。
これで血糖コントロールがばっちり良好になるかと言えばそういうわけでもなく、飲んでない時に比べほんの少し下がったとか、そんな程度です。
あくまで食品であるため、薬のような劇的な効果はありません。
それなりに研究も行う必要があり、企業にとっても大きいセールスポイントになります。
しかし、研究を行うということは本当に効果がある事が求められ、また研究費などもかさむので商品価格が高くなりがちという欠点があります。
栄養機能食品
栄養機能食品は、国が許可している栄養素が基準値の範囲内であれば、その栄養素の機能を表示できるというものです。
例えばカルシウムが210mg以上含まれていれば、「カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です。」といったように、カルシウムの効果を表示することができます。
表示できる栄養素は、各種ミネラルやビタミンで、誰もが知っている栄養素です。
栄養素を含んでいるだけで表示できるので、簡単に表記することができます
しかし、誰もが知っている栄養素ばかりなので目新しさがなく、セールスポイントになりにくいのが特徴です。
機能性表示食品
機能性表示食品は、平成27年より新設された制度です。
科学的根拠を得た上で、届け出をする事により保健効果が表示可能になります。
その際に、薬との相互作用や安全性、健康被害があった場合の対応策なども考慮されていなければなりません。
届け出された内容は、消費者庁の機能性表示食品検索ページから詳細を読む事ができます。
特定保健用食品と違い、消費者庁の審査を受ける必要がありません。
機能性表示食品は何のためにあるのか
機能性表示食品は、消費者から見ると特定保健用食品の下位互換です。
では何のために機能性表示食品が生まれたのか。
特定保健用食品は、消費者庁に個別に審査を受けなければいけないのですが、その審査が大変厳しく、許可取得にかかる費用と時間が掛かり過ぎると問題視されていました。
機能性表示食品の制度は、これらの問題を解決しようとした制度です。
トクホに比べ取得の敷居が低く、栄養機能食品よりも幅広い表示が可能になりました。
機能性表示食品の表示には注意も必要
選択肢が増えたのは良い事かもしれませんが、制度の適用が簡単すぎると問題視もされています。
例えば平成27年6月19日、とある機能性表示食品の表示について、"科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体"が消費者庁に申し入れを行いました。
内容は、安全性や機能性がガイドラインの基準を満たしていないというもの。
食品の効果の評価というのはとても難しいものです。
対象は適切か?方法は適切か?対象者数は十分か?バイアスがかかっていないか?などなど。
様々な要素があります。それらの正しさによって科学的根拠の質が決まります。
有名な学術誌の論文で、査読(専門家による審査・検証)を経ても間違っていたりします。
昔、STAP細胞の捏造が話題になりました。あの論文は世界的な学術誌であるネイチャーにて発表されたものです。
そういった学術誌は査読のレベルも高いのですが、それでもああいう問題が起きるわけです。
一つの臨床試験では根拠としては不十分なことが多々あります。何かしらの効果があったというような研究結果が得られても、たまたまかもしれません。
さらに、企業からすれば良い研究結果を得て発売したいという思いがありますから、発表バイアスというものもかかります。
機能性表示食品に対して、あまり過度な期待はしないほうが良いと思います。
消費者はどうすれば?
健康食品に対する大事な考え方として、「食品に効果を求めない」というものがあります。
食品は薬ではありません。多少なりとも健康効果がある食品でも、薬のように劇的な効果は望めない事がほとんどですし、効果が大きいということは不利益を被る可能性も大きくなります。
食品と健康で一番大事なのは、たくさんの種類の食品をバランスよく食べることです。
健康になりたいという方は、「どの健康食品を食べればよいか?」という考え方はせず、「いろいろな食品を適量食べる」ことを意識するのが良いでしょう。