鉄とは
鉄とは、原子番号26の元素で、元素記号はFeと表記されています。
食品中の鉄の主な形態は、たんぱく質と結合したヘム鉄と、無機鉄の非ヘム鉄に分かれます。 難しいようですが、簡単に言えばヘム鉄は動物に含まれている鉄、非ヘム鉄は植物に含まれている鉄です。こう書くと簡単ですよね?ちなみに、ヘム鉄のほうが吸収が良くて、非ヘム鉄は吸収しにくい鉄です。
また、食品から摂取された鉄は、十二指腸から空腸上部において吸収されます。
鉄の体内での働き
鉄は体内でたんぱく質と結合しており、主に酸素の運搬に関わる働きをしています。代表的な鉄結合たんぱく質を記載しておきます。
ヘモグロビン
ヘモグロビンは赤血球の中に含まれており、血液の中を流れながら酸素の運搬を行っています。
このため鉄分の摂取が不足すると、ヘモグロビンを充分に合成できなくなり、貧血に陥ります。
ミオグロビン
ミオグロビンは、主に筋肉中に存在し、酸素の受け取り手としての機能を持ちます。
筋肉中に酸素を保持しておき、活動量が増えたときなど必要に応じて使います。
また、肉類が赤いのはこのミオグロビンの色です。
フェリチン
フェリチンは、肝臓や脾臓などの臓器で鉄を貯蔵するたんぱく質です。鉄は必要不可欠な栄養素なので、たくさん鉄を摂取できた時に貯蔵しておく仕組みが生物にはあります。
ヒト以外の動物もほとんどがフェリチンを合成し、鉄を貯蔵しています。
トランスフェリン
トランスフェリンは、肝臓や脾臓に貯蔵されている鉄を、血を作る骨髄まで運ぶ役割を持っています。
代表的なものを書いてみましたが、正直なところ、ヘモグロビンの存在だけ知っていれば充分です。 他のは、医療従事者の国家試験ぐらいにしか出てきません。まあ、体内では色々な役割を持っているということです。
鉄の欠乏症と過剰症
鉄の欠乏症
鉄の欠乏症として最も有名なのは、鉄欠乏性貧血です。有名じゃないところだと、認知症との関連が示唆されています。
貧血の症状は、皆さんご存知かと思いますので省略します。
ただ、貧血の原因の一つに鉄欠乏性貧血があるだけで、貧血でも鉄が原因じゃない貧血があるのでその点は注意が必要です。(腎性貧血、ビタミン不足など)
鉄の過剰症
鉄の過剰症はあまり知られていないかもしれませんが、肝臓や膵臓などの臓器に鉄が沈着する、鉄沈着症というものがあります。
これは結構重篤で、鉄が沈着すると臓器がダメージを受け、肝硬変や癌、膵臓なら糖尿病といった、臓器ごとに疾患を引き起こす可能性があります。
通常の食生活でこういった過剰症になることはまずないですが、サプリメントや薬で鉄剤を服用している場合は注意が必要です。
鉄の推奨量と耐用上限量
鉄をどれぐらい摂ればいいか?どれぐらい摂ると有害なのか?というのは厚生労働省の日本人の食事摂取基準にて確認できます。五年ごとに改訂され、このブログの執筆時では2015年版が最新です。
なお、どれぐらい摂ればよいか?という値は推奨量、どれぐらい摂ると有害なのか?という量は耐用上限量という専門用語があります。
上記の表の、推奨量と耐用上限量の項目を見ればOKです。特徴的なのは、他の栄養素よりも基準が細かいこと。
月経があると鉄分を大きく失うので、女性の中でも月経の有無で必要量が変わりますし、また、妊婦や、母乳中に鉄が流れ出る授乳婦でも量が違います。
どんな食品に多いのか
鉄がどんな食品に多いのかというと、とにかく、赤身の肉と内臓です。これらは鉄分が多い上、吸収が良いヘム鉄の形で存在します。
植物性の食品では、ほうれん草や小松菜のような緑黄色野菜、干しぶどうや乾燥プルーン等が濃縮され多く含まれています。ただし、吸収があまり良くない非ヘム鉄の形で存在します。
近頃は、鉄が添加された栄養機能食品(飲むヨーグルトとか)が販売されているので、鉄分が不足していたらそういった商品を利用するのも良いでしょう。
鉄分の吸収を阻害する食品
鉄分の中でも、非ヘム鉄は吸収が悪いことで有名です。ヘム鉄に比べ、他の食品の影響を受けやすく、以下のような成分で吸収が阻害されます。
タンニン
タンニンは、コーヒー、紅茶、緑茶などに含まれている渋味成分です。鉄などの金属イオンと結合しやすい性質を持ちます。
フィチン酸
フィチン酸は、未精製の穀類や、豆類に多く含まれます。糠や玄米、ゴマ等です。こちらも金属イオンと強く結合します。
食物繊維
食物繊維は有名な物質ですが、こちらも吸収を阻害します。食物繊維は鉄も含め、様々な物質の吸収を阻害します。余分な油などを排泄してくれる良い性質でもありますが。
鉄分の欠乏で問題になるのは、ほとんど女性だと思います。男性は気にしたことないんじゃないでしょうか。
また、ダイエットで食事制限をしている場合にも鉄不足に陥りやすいです。たんぱく質はしっかり摂りましょう。
0 件のコメント:
コメントを投稿