こんにちは!前回の記事で、肝臓の働きについて書きました。今回は肝臓の病気についてです。
肝臓の病気の発症様式
肝臓の病気の原因にはいろいろありますが、肝臓の症状についてはあまり変わりはありません。どんな原因にしろ、以下のような状態となることが多いです。
1,急性肝炎
急性肝炎とは、文字通りですが急性に起こる肝臓の炎症反応です。対する言葉に、慢性肝炎があります。
原因はほとんどがウイルス性です。ウイルス性肝炎は、母子感染や幼児期に感染するとウイルスを排除しきれず慢性化しやすいですが、免疫が成熟した大人が感染すると激しい炎症反応が起きます。
症状は発熱や悪心、皮膚や白目が黄色くなる黄疸などがあります。急性肝炎の場合は、その後ウイルスのキャリアとなることもなく、予後も良好です。
ただし、ひどい炎症で肝臓の機能を失うような状態になることもあり、その場合は劇症肝炎と呼ばれ別に区別されています。肝臓は生命維持に必要な機能が多数あり、それらが失われるというのは命に関わる事態です。例えばアンモニアの代謝ができず昏睡状態に陥ったり、血小板を合成できず出血が止まらなくなったりと、非常に多様な症状を引き起こします。
2,慢性肝炎
慢性肝炎は、六ヶ月以上肝臓で炎症が起きている状態です。急性肝炎に比べ炎症の具合は弱く、症状はほとんどありません。
無症状であるため気が付かないことも多いですが、慢性的に炎症が起きていることによって、少しずつ肝臓の細胞が線維化していき、肝硬変へと移行します。また、肝がんの発生率も上昇します。
3,肝硬変
肝硬変とは、肝臓の慢性的な炎症により肝臓が線維化した状態をいいます。肝臓の機能が著しく落ち、また肝がんの発生率も上昇します。
肝炎との大きな違いは、肝臓の構造自体が変化してしまうため、もとに戻らないという点です。炎症が起きているだけの状態であれば、肝臓は再生力が強いため原因を取り除ければもとに戻ります。
肝硬変は大きく、代償性と非代償性という状態に分けられます。
代償性
代償性とは、落ちている肝臓の機能を、残った正常の肝細胞や、他の臓器などが肩代わりしてなんとか状態を保っている状態です。
たとえば、体にとって毒になるアンモニアの処理は肝臓が主に行いますが、肝臓の機能が落ちると筋肉でも代謝をするようになります。
この状態では、体のだるさや食欲不振などの軽度な症状で済みます。
非代償性
非代償性とは、肝臓の機能が落ちすぎてどうにもならなくなったような状態です。
生命維持に必須な機能が失われ、例えば血中アンモニアの上昇による意識障害、全身の浮腫、腹水などが起こります。
4,肝がん
肝がんは、その名の通り肝臓にできる癌です。
肝がんの多くは、上記に挙げたような病気で、破壊と再生を繰り返した末にできる癌です。
とくに肝硬変などで肝臓全体が大きく痛めつけられている状態です。なのでいったん手術で取り除いても、別の場所で再発したり、一箇所だけではなく数箇所同時に癌が発生したりすることもあります。
肝がん発生時は、肝がん自体の手術に加え、肝がんの再発生を防ぐために原因となる病気の改善が必要となります。
肝臓の病気の原因
今までの内容は、肝臓の病気の状態について書いてきました。次に、そういう状態になってしまう原因について書いていきます。
ウイルス性肝炎
ウイルス性肝炎とは、肝臓にウイルスが入り込み、炎症を起こす病態です。肝臓の細胞にウイルスが入り込み完全に除去できないと、キャリア化し慢性的な炎症を起こします。強い炎症反応で除去しきれると、キャリア化しないで済みます。基本的には小さい頃の感染でキャリア化しやすく、抵抗力の強い成人以降での感染は、急性肝炎となりキャリア化し辛いです。
キャリカ化し慢性肝炎となると、数十年後には肝硬変の原因となります。日本での肝硬変の成因のうち、8割近くはウイルス性肝炎です。若年層ではかなり保有率が低下していますが、高齢者ではキャリアとなった方が多数います。
肝炎ウイルスはいくつか種類がありますが、A型、B型、C型が有名です。
A型肝炎
A型肝炎は、一過性の急性肝炎がほとんどで、キャリア化することはまずありません。A型肝炎は糞便中に排泄されるため、汚染された飲料や食品から経口感染します。
衛生状態の良い日本ではあまり感染しませんが、発展途上国ではまだ流行が見られています。
B型肝炎
B型肝炎は血液や体液を介して感染します。国内では、戦後から1988年頃まで行われた幼児期の集団予防接種時の注射針の使い回しによりB型肝炎が蔓延しました。
近年でも、タトゥーや薬物の注射器、ピアス等を介して感染することがあります。ピアスの使い回しやタトゥーを入れる時には注意が必要です。そういった処置をする場合でも、なるべく衛生環境の良い日本で行うのが良いかもしれません。
B型肝炎は成人に感染した場合の多くは急性化し治癒します。が、ウイルスの型によっては慢性化することもあります。
B型肝炎は現在ウイルスを完全に除去する方法が存在せず、生涯薬を飲み続けてウイルスを沈静化させる必要があります。
C型肝炎
C型肝炎も、B型と同じく血液を介して感染します。かつては輸血による感染が多く母子感染も稀ですが起こります。
現在は、B型と同じくタトゥーや、薬物の注射器使い回し等によって感染が広がっています。C型肝炎は感染すると、約70%で慢性化し、キャリア化します。
C型肝炎は、2014年から良い薬ができて副作用も少なく、高い確率(95~100%)で除去することが可能になっています。
アルコール性肝障害
アルコール性肝障害とは、常習的なアルコール摂取による肝障害です。脂肪肝、肝炎、肝硬変などの状態になり、最終的には肝がんに至ります。
アルコール性肝障害の治療は、とにかく断酒に尽きます。しかし、常習的にアルコールを摂取している人が断酒するのは非常に困難です。断酒の方法については、また別の記事でそのうちまとめたいと思います。
脂肪肝
脂肪肝とは、様々な原因によって肝臓に脂肪が異常に沈着した状態です。脂肪肝は大きく、アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝に分けられます。
アルコール性脂肪肝は、長期にわたる過剰な飲酒により肝臓に脂肪が沈着した状態です。アルコールにより脂肪の沈着が促進されます。
非アルコール性脂肪肝は、近年注目されている疾患です。アルコールを飲んでいるわけではないのに、肝臓に脂肪が蓄積している状態です。
非アルコール性脂肪肝の原因は、多くは肥満、糖尿病、脂質異常症などを基盤に発症します。メタボリックシンドロームの肝病変としても捉えられています。
なので治療方法も運動療法や食事療法で体重を落としたり、生活習慣を適正に改善したりするなど、メタボ解消と同じような方法をとります。
非アルコール性脂肪肝も、ほうっておくと脂肪肝炎へ進展し、最終的には肝硬変や肝がんに至るため改善が必要です。
まとめ
肝臓の勉強会に参加したので、肝臓の病気についてまとめてみました。
栄養療法についても気が向いたら書くかもしれません。
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