こんにちは!今日の更新は、山芋やオクラに含まれると言われるムチンという物質についての話です。
テレビや雑誌、ネット上で山芋やオクラ、納豆等のネバネバはムチンという物質によるもの、とよく紹介されています。
しかし、実は山芋や納豆のネバネバをムチンというのは誤りです。
実は植物のネバネバをムチンというのは誤り
ネバネバのある植物性の食品は多数あります。山芋、納豆、オクラ、なめこ、モロヘイヤなど。
このネバネバは一般に体に良いと言われ、胃や腸を保護する等と言われています。このネバネバ成分は、よくムチンと呼称されています。
ムチンという呼称は、テレビや雑誌、ネット上でよく出てくる表記です。山芋や納豆の紹介があれば、よく粘り成分の説明としてムチンという単語が出現します。(ついでに、ムチンは体に良いと紹介されます)
しかし、実は植物性食品のネバネバをムチンと呼称するのは誤りです。
このことは、北里大学理学部の丑田公規教授が、「生物工学」誌(97巻1号)にて執筆した解説にわかりやすく記載されています。
丑田教授の解説では、「ムチン,すなわちmucin(発音はミューシン)と呼ばれている物質群は,図1に示す2種類のO型糖鎖を「多数」含んだ糖タンパク質であると定義されている」としています。
※二種類のO型糖鎖とは、セリン残基またはトレオニン残基のOH基が、単糖または糖鎖の1位のOH基と脱水縮合したもの。詳しくは元の解説より確認を。)
今のところ、こういった構造が確認されているものは、微生物あるいは動物由来です。植物に含まれている粘性物質はムチンではない別の物質であり、構造からもムチンと呼べるものではありません。
また、日本食品工業学会の方から連絡を頂きましたが、日本食品工業学会編の食品工業辞典のムチンの記述も2020年7月30日に訂正されています。
(訂正前)
動植物より分泌される粘質物一般をいう。
(訂正後)
動物より分泌される粘質物一般をいう。
ムチンと呼んで何が悪いのか
科学的には植物性のネバネバをムチンと呼ぶのは誤りですが、非常に広く浸透しています。例えば農林水産省のページ。
ホーム>報道・広告>aff最新号>affバックナンバー2011年>11年9月号目次>特集2 食材まるかじり(1)
リンク切れしそうなのでリンクは貼りませんが、「栄養たっぷり!ネバネバ食材で元気に」というタイトルの記事の一文に、こんな記載があります。
ネバネバの正体とは
ネバネバ食材に含まれる「ネバネバ」「ヌルヌル」の素となる粘性物質は、食品ごとにいろいろな種類があって、それぞれが健康の維持に役立つと注目されています。 やまのいも、オクラ、納豆などに含まれるムチンは、ムコ多糖たんぱく質と糖たんぱく質の混合物です。ムコ多糖たんぱく質の「ムコ」はラテン語で「動物の粘液」の意味。細胞と細胞をつなぐ保水力を持ち、胃の粘膜を保護します。
国の広報ページにすら使われている名称です。
そこまで浸透しているなら、植物性のネバネバをムチンと呼称しても良いのでは?とさえ思ってしまいます。
しかし、医食同源という言葉もあるように、日本人は食と健康を結びつけたがる民族です。
実際に食品や野菜のPRや健康番組で、「ねばねば物質のムチンを摂取することで、胃を保護するムチンの補充になる」等と科学的にも誤った健康に関わるうんちくが紹介され広まっています。
誤ったまま世間の常識として根付いてしまうのは良くない事ですし、健康に関わる事だと言うなら情報の正確性は重要で、用語の間違いも認めるべきものではないと思います。
用語や定義というのは科学を理解する上でとても大事です。
食品業界は、用語や定義を曖昧にしてPRに活用することが多々あります。
代表例としては、「免疫力」という用語があります。誰もが知っている言葉だと思います。
「緑茶は免疫力を上げる飲料!」これは実際にネット上に記載されていた文面です。
この文章を執筆した方に、「緑茶をどれぐらいの期間、どれぐらいの量を飲んだら、なんの感染症のリスクが何%低減するんですか?」と聞いたら答えられないはずです。
なぜかというと、免疫力というのは医学用語ではないからです。
医学用語として存在しない言葉なので、研究もありません。実際の研究では、もっと細かい指標を用いて研究を行います。
しかし、研究としてなくても、免疫力を使った文章というのは世の中にあふれています。
「免疫力を上げるらしいからそう書いておこう」、「免疫力なんて上がらないかもしれないけどPRのために書いていこう」こんな感じだと思います。
食と健康の情報はそんなレベルの話であふれていて、レベルの低い情報が多い理由の一つとして、用語や定義の曖昧さ、曖昧でも気にしない国民性があると思います。
まとめ
今回の記事では、植物性の粘性物質をムチンと呼称するのは適切ではないということを紹介しました。
しかしネバネバをムチンと呼ぶことは既に広く浸透しており、言葉の意味も時代と共に移り変わっていくものであることから、誰もがそう認識しているならムチンと呼んでも良いのかもしれません。
しかし筆者が危惧しているのは、テキトーなカタカナと効能を書けばそれっぽく見えてしまうこと、そして日本人がそういう情報に弱いことです。
例えば先程書いた「ねばねば物質のムチンを摂取することで、胃を保護するムチンの補充になる」この説明文は誤りですが、これを読んだほとんどの人は誤りとは思わずそういうものなんだと認識するでしょう。
今回の記事を通して、世の中の食と健康の情報には嘘や間違いが多いということを覚えていてもらえると幸いです。
記事をお読み頂き、ありがとうございました。
最後にちょっとした広告を。
自分で使ってみて、良かった調理器具を紹介いたします。ご家庭に合うものがあれば、ぜひお試しください。
貝印 関孫六 15000ST 高級包丁
最近新調した包丁です。久しぶりに買い替えるので良い包丁にしようと思って見つけたのがこちら。
包丁の刃にコバルトスペシャルという最高級の素材を使用しており、切れ味が落ちにくく、研ぎやすく、鋼に比べ錆びにくいという高級包丁です。
レビューも書いているので、興味がありましたらご確認下さい。
シリコン調理スプーン
山崎実業のシリコン調理スプーンは、すくう・炒める・計るの3機能がまとまった調理スプーンです。
特徴的なのは5ccと15ccの計量線が入っており、醤油や酒など計りながら調理作業が行なえます。調理作業に無駄がなくなり、一度使うと普通のヘラには戻れない快適さです。
置くためのスタンドもついており、キッチンを汚さず仮置きでき非常に便利です。
ぜひ家のヘラや調理スプーンと交換してみてください。
ゆで卵電気スチーマー
時間管理が面倒なゆで卵や半熟卵が安定して簡単に作れるようになります。ゆで卵や半熟卵をよく作る方に特にオススメしたいです。
コンロを使わないのがすごく良いです。卵以外にも蒸し野菜や肉まん等に使えます。
シリコンスチーマー
野菜や肉、魚を入れて電子レンジでチンすると、簡単に蒸し物になります。
シリコンなので洗いやすく、折りたたんで収納できるため場所も取りません。
ぶんぶんチョッパー(手動フードプロセッサー)
糸を引く事で食材をみじん切りにすることができる手動フードプロセッサーです。
電動に比べ、コンセントを必要としない点と、価格が安い点が優れています。
コンセントを必要としないので、キッチンのコンセントまわりがいっぱいでも自由に設置できます。
みじん切りの頻度が少ないけどたまにフードプロセッサーを使いたい、という場合にオススメです。
取ってが取れるフライパン
今まで我が家では普通のフライパンでしたが、取ってがとれるタイプのフライパンに変えてみたら便利さにビックリ。
重ねて入れられるため収納スペースをとりません。また、冷蔵庫に調理したものをそのまま入れて保存するのに場所をとらないので、とても良いです。
では、単に糖タンパク質と呼称すべきなのでしょうか。
返信削除半端な記事ですね。否定だけして、何と呼ぶのかが書かれていない
返信削除(速報)日本放送協会 よりお詫びと訂正(2024/02/16):
返信削除なめこ、オクラ、山芋などのヌルヌルした成分は『ムチン』と呼ばれるタンパク質だとお伝えしましたが、ムチンとは異なる成分でした。
https://www.nhk.jp/p/chicochan/ts/R12Z9955V3/
https://www.nhk.jp/p/chicochan/ts/R12Z9955V3/episode/te/K8KJ6NVJ6W/
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(速報)JAグループ(一般社団法人全国農業協同組合中央会) より訂正報道新着(2024年8月30日):
返信削除JAグループHPに掲載している「とれたて大百科」のオクラ・サトイモ・レンコン・ヤマノイモ・モロヘイヤのページにおきまして、「ムチン」という表記しておりましたが、近年の研究において、「ムチン」は動物性の物質であり、植物全般には含まれていないと判明し、当該表記が誤りであることが分かりました。お詫びして該当ページを削除いたします。
https://life.ja-group.jp/information/detail/?id=167
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