こんにちは!
今日の更新は、お米をお湯や泡立て器で研いでもよいのか?というテーマです。
寒い時期になると、冷たい水でお米を研ぐのはなかなかツライものがあります。なので、お湯や泡立て器で研げると手にやさしく、研ぐのも苦痛になりません。
しかし、一般的には米は水で研ぐものとされています。食品学の視点から見て、実際のところはどうなのでしょう?
今回は面白い論文も見つけたので引用しつつ、記事を進めてまいります。
お急ぎの方もいるかもしれないので、結論だけは先に述べておきます。
「お湯で研いだり、泡立て器で研いだりしても良い。実際にためし、自分で納得できる味か確かめてみるべし。百聞は一見にしかず。」
【目次】
1 そもそも米を研ぐのはなぜ?
2 お湯で研ぐのは?
2.1 理由1 肌ぬかのぬか臭さを米が吸ってしまうから
2.2 理由2 アミラーゼが働きでんぷんが流れ落ちるから
3 泡立て器で研ぐのは?
4 結論
そもそも米を研ぐのはなぜ?
そもそも私たちは、なんのために米を研いでいるのでしょうか?
米は稲からとれ、脱穀し、籾摺り(もみすり)をし籾殻を取り除くことで玄米になります。
玄米はぬか層に包まれており、ぬか層を除去することを精米といい、精米した米を白米といいます。
では、精米した米をさらに研ぐのはなぜでしょう?
実は、精米した米にはまだ、「肌ぬか」と呼ばれる粘着性が高いぬかが微妙に残っています。肌ぬかを洗い流すために、米を研ぐわけです。
この肌ぬかまで除去して売られている商品が、皆さんご存知の無洗米というものです。無洗米という文字どおり、研ぐ必要がなくなります。
ここで私が一つ疑問に思うのは、この「肌ぬか」をそこまで頑張って洗い流す必要があるのか?という点です。
玄米なんて、肌ぬかどころが、ぬか層ごと食べますよね。むしろぬか層が残っているほうが栄養価は高いです。
肌ぬかを洗い流すのは、ぬか臭さがあるからです。しかし、最近は米の品種改良も進み、精米技術も向上し、あまり研がなくても良くなったと言われます。
さすがに全く洗わないと臭みもありますが、すべての肌ぬかを完璧に除去しないといけない、というわけでもないと思います。そういう観点で話をすすめていきます。
お湯で研ぐのは?
まずは、米をお湯で研ぐ話からしましょう。
米はなぜお湯で研いではいけないのか?食品学的には以下のような理由です。
理由1 肌ぬかのぬか臭さを米が吸ってしまうから
米はとてもよく水を吸います。そして、水よりもお湯のほうがよく吸います。
研ぎはじめの水は、肌ぬかが溶け込んでいるので、できるだけ米に吸わせたくありません。
しかし、お湯で研いでしまうと、肌ぬかが溶け込んだお湯を米がよく吸ってしまいます。なのでお湯よりも水のほうが良いと言われます。
理由2 アミラーゼが働きでんぷんが流れ落ちるから
とても科学っぽい単語がでてきました。アミラーゼです。
アミラーゼとは、デンプンを分解する酵素です。
デンプンとは、糖がたくさん結合した分子です。
そして米はほとんどがデンプンでできています。
デンプンがアミラーゼで分解されると糖になります。これ自体は甘味にもなるので悪い働きではありません。
しかし、研ぎ途中にこの酵素が働いてしまうと、せっかくできた甘味成分が研ぎ汁中に流れ出ていってしまいます。
アミラーゼは40℃~60℃ぐらいでよく働きます。水で研ぐよりお湯で研ぐほうがよく働くということです。
なので、お湯で研ぐと甘味成分が流れ出て、仕上がりの甘みが減ると言われています。
もっともらしい理由で、科学的に誤りはありません。ただ、食品の難しいところは、「じゃあ食べ比べてみて本当に差があるの?」という点です。
残念ながら、私が調べた限りではこれを検討している論文を見つけられませんでした。
どこかのお米マイスターの方の意見等はネット上で散見されますが、食味としてどうなのかを検討しているものはありませんでした(見つけた方は紹介していただきたいです)。
理由1にしろ、理由2にしろ、科学的には間違ったことではありません。
しかし、それが実際に食味にどう影響しているかは難しいです。理由1のぬか臭さについては、米の品種、新米か古米か、精米方法などにも左右されます。すべての米で同じとは限りません。
つまり、お湯で洗っていいかどうかは、「あなたが試してみて、納得できる味かどうか」にかかっているということです。
参考文献
米の浸漬におけるデンプン分解酵素の活性と品種および産地間での差異
岸尾昌子 青柳康夫 日本食品科学工学会誌 61(6) .232-243(2014)
泡立て器で研ぐのは?
次に、泡立て器で研ぐのはどうでしょう?冷たい水に手をつけずにすみます。
一般的には、泡立て器で研ぐと米が割れるからNGといわれます。実際のところどうなのでしょう。
泡立て器で研ぐことについては、まさにピッタリな文献がありましたので紹介いたします。
泡立て器による洗米操作が米飯の食味に及ぼす影響
関本美貴 島田淳子 日本調理科学会誌 Vol.38 No.1 67-71(2005)
こちらの研究では、米200gに水500mlを加えて、手または泡立て器で10回撹拌、水切りし次は20回撹拌、これを3回繰り返す、という方法で洗米を行っています。
まずはこちらの表から。洗米方法を手洗い、泡立て器にわけ、泡立て器は混ぜる速度をかえて割れ米の発生率を見ています。
手でも泡立て器でも割れ米は発生しますが、泡立て器で高速で撹拌すると特に発生しやすくなります。
手洗いと泡立て器で同じぐらいのスピード(2回/秒)で撹拌すると、泡立て器のほうが割れ米の発生率は高かったですが、有意差はありません(有意差なし=意味のある差があるとはいえない)。
次にこの表を見てください。
先程の泡立て器をもちいて洗米した米を、炊飯して味を確認した表です。
泡立て器で高速撹拌すると、割れ米が増えるのはわかっていますが、それが食味に影響するかどうか。
少なくともこちらの論文では、見た目の米粒の形や甘味、舌触りなどに影響はなかったということです。
お湯の話のときと同じく、科学的にはたしかに割れ米が発生しやすくなり、品質としては低下しています。しかし、実際にそれが食味に影響しているかというと、難しいところです。
泡立て器に関しても結局のところ、「あなたが試してみて、納得できる味かどうか」にかかっているということです。
結論
米を洗うのは、お湯よりも水で洗うのが最善なのは間違いありません。
しかし、お湯で洗ってそこまでの差があるか?というと難しいところです。
私の家で検証したところ、お湯で研いでもそこまでの差は感じませんでした。多少のぬか臭さがあるような気がする…、そんな程度です。
甘味はまったく変わらないと感じました。まあ、多少デンプンが流れ落ちているとしても、大部分は残っていますからね。プロの料理人の方なら区別がつくのでしょうか?
泡立て器に関しては、割れ米はたしかに発生しやすくなりますが、こちらも炊飯後の食味に影響を与えるかは不明です。私の家で試したところ、違いはわかりませんでした。
もし泡立て器で研ぐ場合は、シャカシャカしないでやさしく撹拌すると良いでしょう。
よって結論は、「お湯で研いだり、泡立て器で研いだりしても良い。実際にためし、自分で納得できる味か確かめてみるべし。百聞は一見にしかず。」
余談ですが、米研ぎ棒という便利アイテムも存在します
研ぎ性能自体は泡立て器でもたいしてかわらないと思いますが、泡立て器は炊飯釜の内側のコーティングを痛める可能性があります。
釜を炒めたくない方や、効率よく米を研ぎたい方はこういった米研ぎ棒のようなアイテムを使っても良いかもしれません
記事をお読み頂き、ありがとうございました。
最後にちょっとした広告を。
自分で使ってみて、良かった調理器具を紹介いたします。ご家庭に合うものがあれば、ぜひお試しください。
貝印 関孫六 15000ST 高級包丁
最近新調した包丁です。久しぶりに買い替えるので良い包丁にしようと思って見つけたのがこちら。
包丁の刃にコバルトスペシャルという最高級の素材を使用しており、切れ味が落ちにくく、研ぎやすく、鋼に比べ錆びにくいという高級包丁です。
レビューも書いているので、興味がありましたらご確認下さい。
シリコン調理スプーン
山崎実業のシリコン調理スプーンは、すくう・炒める・計るの3機能がまとまった調理スプーンです。
特徴的なのは5ccと15ccの計量線が入っており、醤油や酒など計りながら調理作業が行なえます。調理作業に無駄がなくなり、一度使うと普通のヘラには戻れない快適さです。
置くためのスタンドもついており、キッチンを汚さず仮置きでき非常に便利です。
ぜひ家のヘラや調理スプーンと交換してみてください。
ゆで卵電気スチーマー
時間管理が面倒なゆで卵や半熟卵が安定して簡単に作れるようになります。ゆで卵や半熟卵をよく作る方に特にオススメしたいです。
コンロを使わないのがすごく良いです。卵以外にも蒸し野菜や肉まん等に使えます。
シリコンスチーマー
野菜や肉、魚を入れて電子レンジでチンすると、簡単に蒸し物になります。
シリコンなので洗いやすく、折りたたんで収納できるため場所も取りません。
ぶんぶんチョッパー(手動フードプロセッサー)
糸を引く事で食材をみじん切りにすることができる手動フードプロセッサーです。
電動に比べ、コンセントを必要としない点と、価格が安い点が優れています。
コンセントを必要としないので、キッチンのコンセントまわりがいっぱいでも自由に設置できます。
みじん切りの頻度が少ないけどたまにフードプロセッサーを使いたい、という場合にオススメです。
取ってが取れるフライパン
今まで我が家では普通のフライパンでしたが、取ってがとれるタイプのフライパンに変えてみたら便利さにビックリ。
重ねて入れられるため収納スペースをとりません。また、冷蔵庫に調理したものをそのまま入れて保存するのに場所をとらないので、とても良いです。
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