こんにちは!今日の更新は、日本人の食事摂取基準2020年版の改定についてです。
日本人の食事摂取基準については知らない方も多いと思います。
日本人の食事摂取基準とは、日本人の栄養素の摂取量について、厚生労働省が基準を定めた文書です。
日本を中心に、世界中の論文も含めて検討されており、科学的根拠に基づいて策定されています。
管理栄養士としては、当然読んで確認するものですが、専門職以外の方にとっても大事な内容になっています。
食事摂取基準は5年ごとに改定されており、現時点では2020年版が最新です。
ということで、今回の改定についてまとめてみました。
高齢者の低栄養・フレイル予防が重視されている
今回の改定では、策定の目的に高齢者の低栄養・フレイル予防が追加されました。
今までも高齢者を軽視していたわけではないですが、より重視されたという感じですかね。
これから高齢化社会を迎えるので、その準備という側面もあると思います。
ちなみにフレイルとは見慣れない単語かもしれませんが、直訳すると虚弱という意味です。
介護を要するほどではないけど、身体機能や認知機能が低下した状態を指します。
低栄養・フレイル予防が目的に追加され、内容的にもたんぱく質やカルシウム等の項目に、フレイル予防についての記載が追加されています。
しかし結局のところ、具体的な数値にできるほどの科学的根拠がなく、フレイル予防のための付加量等は策定されていません。
策定はされていませんが、それらの項目を読むと、どのような研究論文があったか紹介されており、数値は策定されていなかったものの考え方について勉強になると思います。そういった意味では有意義ですね。
また、高齢者の年齢区分が変更され、前期高齢者と後期高齢者が区分されました。
今までは、高齢者は70歳以上とひとまとめにされていましたが、65~74歳と、75歳以上にわかれています。
老健勤めなので、高齢者の区分が細かくなるのはありがたいですね。
主要な変更まとめ
全体的に基準値の変更も見られます。まとめてみました。
- たんぱく質目標量
高齢者の区分において、摂取エネルギーの13~20%→15%~20%へ引き上げ - 食塩目標量
男性8.0g→7.5g 女性7.0g→6.5gへ引き下げ - ビタミンDの目安量
18歳以上の区分において、5.5μg→8.5μgへ引き上げ - クロムの耐用上限量
新たに策定 18歳以上の区分で500μg - コレステロールについて、脂質異常症の重症化予防の目的とした量について、200mg/日未満に留めることが望ましいことを記載
他にも色々と細かな変更がありますが、主要なところはこのあたりでしょうか。
他サイトでまとまっているページとして、ヘルシーフードの栄養指導Naviのページが見やすくてとても良いです。
食塩目標量引き下げについて
この中でも特に気になるのは、食塩目標量の引き下げです。
今回引き下げられた理由は、簡単に言うとそのほうが健康に良いからです。
WHOのガイドラインによると、成人に対する推奨は5g未満、ヨーロッパ心臓病学会や高血圧学会等でも5g未満を勧めています。
健康に関して言うと、一日5g未満ぐらいのほうが健康には良いようです。
しかし、日本の高血圧症ガイドライン等では6g未満と、世界に比べると基準は緩めです。
これは、日本は醤油や味噌など高塩分の食文化があり、5g未満の達成がかなり厳しいからです。
現実的に達成できる値として、6gが目標となっているわけです。
日本人の食事摂取基準でも、ちょっとずつ基準が引き下げられているということですね。
ただし、高齢者の低栄養予防の観点からすると、減塩は必ずしも有効ではありません。
高齢者は加齢により塩味を感じにくくなるので、減塩しすぎると食の進みが悪くなることがあります。
食の進みが悪くなると低栄養・フレイルといった問題が出てくるので、美味しく食べられる範囲で、という観点も大事です。
まとめ
全体的にいうと、高齢者について多少細かい記載が増えたぐらいで、2015年版から大きくは変わっていないかなと思います。
2015年版の段階でも、世界中の論文を探して策定されているので、5年では新しい大規模な論文等は出ないのかもしれません。
個人的には、たんぱく質の上限量についての記載が進んでほしいですね。
慢性腎臓病においては、たんぱく質の過剰摂取が腎機能を低下させるので、健常者でも長期的には影響があるんじゃないかなと思っているんですが・・・。
また、老健勤めとしては、高齢者の区分がより細かくなったのが良かったです。
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