こんにちは!今日の更新は塩と高血圧についてです。
塩の摂りすぎで高血圧になる、というのはよく言われているので皆さんご存知だと思います。
しかし、なぜ塩を摂ると高血圧になるのかは、知らない人も多いのでは。
統計をとると、塩分摂取量が多い人ほど高血圧になるのは明確です。
ただ、その仕組みは非常にむずかしく、わりと最近までわかっていなかったそうです。
このメカニズムについて、2011年4月に、東京大学大学院医学系研究科・東京大学医学部附属病院の藤田敏郎教授らのグループによる研究成果で仕組みが解明されました。
論文は英語ですが、日本語の解説verも公表されています。それがこちら。
ということで、これらの内容について解説していきます。
体は塩を厳密にコントロールしている
まず事前知識として知っておいてもらいたいのが、人間の体は塩(ナトリウム)を厳密にコントロールしているということ。
塩は食事から摂取されると、一部は便に混ざり排泄されますが、その大部分が小腸にて吸収されていきます。
吸収された塩は、血液として流れるわけです。しかし、血液中の塩の濃度というのは、必ず一定でなければいけません。
血液中の塩が多ければ、高ナトリウム血症、少なければ低ナトリウム血症と言いますが、いずれも重症になれば昏睡や意識障害などをきたします。
醤油を1Lぐらい一気飲みすれば人は死ぬと言われます。実際に、国内で醤油を使った自殺未遂の症例なんかもあります。
醤油を一気に飲むことで多量の塩が吸収され、排泄が追いつかないうちに急激に血液中の塩が増えることで、命に危険があるような高ナトリウム血症となります。
つまり、体は塩を厳密にコントロールしており、一定の量をはずれるとそれだけで命に関わるということです。
塩のコントロールの方法
塩をたくさん摂取したとして、どうすれば一定の濃度を維持できるか?原理としては、以下のような方法があります。
血液中の水分量を増やす
濃度を保つのが重要なので、塩が増えたら、その分水分を増やせば濃度が一定になりますね。
塩は、浸透圧の関係もあり、水をもってきやすい性質があります。血液中に塩が増えれば、細胞などから水分をもってきて、水分量を増やし、濃度を一定に保ちます。
この仕組みで塩分濃度を保てるので、一件落着か?と思いきやそうではないのです。
血液中の水分量を増やすことによって、塩分濃度は一定に保たれたかもしれません。
しかし、血液中の水分量が増えたということは、血圧も上がります。圧が強いなか、血液を送り出し続けなければいけないので、心臓の負担も大きくなります。
これでは、そのうち心不全になってしまいます。
これらの仕組みは一見、塩分を摂ったら血圧が上がる理由を説明できているように見えます。
しかし、実態はもっと複雑です。この仕組みで血圧が上がっているというのならば、塩を摂らなければ血圧は速やかに下がるはずです。
でも高血圧の人が、血圧測定日の前日から塩分をカットしたからといって、血圧が一気に正常値になるかというと、そうではありません。
気持ち下がるかもしれませんが、塩分をカットしても高血圧は高血圧なのです。減塩生活を継続して、やっとほんのちょっと血圧が下がります。
さて、話を戻しますが、体としては上記の仕組みだけでは心臓に負担がかかり不都合です。ではどうするか。
塩分を排泄しなければいけない
血液中の水分量が増えれば塩分は一定濃度になりますが、水分量が増えると心臓に負担がかかってしまいます。
なので、塩分を排泄していかなければなりません。
塩分は、一部は汗から排泄されますが、大部分は腎臓から尿として排泄されています。
一方で、塩分は少なすぎても問題です。なので、十分な塩分を確保できないときのために、排泄した塩分を再吸収する機能もあります。
この機能により、塩分が多ければ排泄を促し、逆に塩分がほとんど摂れないときは再吸収して塩分を使い回すことで、体内の塩分を一定に維持します。
塩分の摂取量が多いと、調整機構が壊れてくる
しかし、どうやら塩分の摂取量が多い状態が続くと、この調整機構が壊れてくるようなのです。
どういう順序かというと、冒頭の解説に詳しく書いてありますが、なるべく簡単に抜き出してみます。
- 塩分をたくさん摂る
- 腎臓の交感神経活動が活発になる
- ノルアドレナリンの放出により、β2アドレナリン作動性受容体が活性化する
- β2アドレナリン作動性受容体の刺激を受けて、遺伝子の発現に関わるヒストンというたんぱく質の働きが阻害される
- 塩分排出遺伝子(WNK4遺伝子)の活性が抑制される
- 腎臓での塩分排出が低下する
- 血液中の塩分濃度が上がる
- 塩分にくっついて水分が血液に増え、血圧が上昇する
これでも難しい感じがしますが、要するに、「塩分の摂取量が多いと塩分の調整機構が壊れてくる」ということです。
その結果、塩分の排出機能が低下し、体の中の塩分が増え、それに伴い水分も増えて高血圧になります。
調整機構自体が悪くなっているので、塩分の摂取を一時的に減らしても、血圧はなかなか下がりません。
血圧の高い人の全てが、塩分が原因というわけではない
上記の機序は「塩分感受性高血圧」と言います。塩分と血圧の関係が強い人で起こる現象です。
上記以外の要因で血圧が高い人もいます。そういう人は「塩分非感受性高血圧」と呼ばれます。
減塩による降圧効果は、塩分感受性高血圧の人のほうが大きく、塩分非感受性タイプの人は降圧効果が低くなります。
これについてはタイトルから外れていくので解説しませんが、日本人は塩分感受性タイプの人が欧米人の比べ多いと言われます。
まとめ
塩を摂ると血圧が高くなるのはなぜか?というと、「塩分過多により腎臓の塩分調整機能が壊れ、塩分を貯留しやすくなり血液中の水分量が増えるから」です。
今までの統計などでも、減塩の習慣は、小さい頃から始めると将来の高血圧予防に良いことがわかっていました。
一方、塩分の高い食事を食べ続け、高齢になって高血圧などの問題が出てから減塩しても、効果は薄くなりがちです。
こういった現象の説明も、上記の機序で説明がつきます。
高血圧予防のために減塩生活を始める場合は、なるべく若いうちから習慣づけるのが良さそうです。
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