こんにちは!今日の更新は、グルテンフリーの食事についてです。
最近レシピ執筆の仕事をしていて、グルテンフリーだった場合明記してほしいという話がありました。
小麦製品を抜くと体調が良くなるという健康法があるらしい。
ということで、グルテンフリーの食事について、自身の勉強も兼ねて書いていきます。
グルテンとは?
まず用語の説明から。グルテンとは?という話です。
グルテンとは、小麦に含まれるタンパク質の一種です。
小麦に含まれるタンパク質を細かくすると、水・塩に可溶性のアルブミンやグロブリンと、不溶性のグルテンに分けられます。
グルテンのうち、70%アルコールに溶解するものをグリアジン、溶解しないものをグルテニンと分類します。
これらが結合し高分子化したものがグルテンです。
グルテンは水を加えて練ると粘りを作る性質があり、この性質から多くの加工食品に利用されます。
例えばパンや麺は、小麦に水を加え、グルテンの粘りを出して作り上げています。
逆に、天ぷらの衣は、グルテンの粘りが出ると重たい仕上がりになってしまうため、混ぜすぎないように注意するのが常識となっています。
グルテンフリーの食事というのは、これらを摂らない食事ということになりますね。
なぜグルテンフリーにするのか
日本ではグルテンフリーの食事というのは、ほとんど見かけません。
どこかの週刊誌で、怪しい健康法として取り上げられている程度です。
しかし、欧米ではスーパーにグルテンフリーのコーナーがあったり、カフェでグルテンフリーを明記していたりします。
ではなぜ、グルテンフリーの食事が必要なのか?
まず第一に、小麦アレルギーの存在があります。
小麦アレルギーの方は、小麦たんぱくであるグルテンを除去する必要があります。
次に、日本ではあまり知られていませんが、セリアック病という疾患があります。
セリアック病とは、小麦に含まれるグルテン摂取により、グルテン感受性T細胞が活性化し、小腸に炎症を起こす自己免疫疾患です。
小腸に炎症が起き破壊されることで、下痢や吸収障害等の問題をきたします。
小麦アレルギーとセリアック病の違い
セリアック病とはつまり、小麦アレルギーじゃないの?と思うかもしれませんが、そうとも言えるしそうではないとも言えます。
食物アレルギーは、食物アレルギー診療ガイドラインによると、「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」と定義されています。
この定義だけでずいぶん難しい文字が連なっていますが、小麦アレルギーもセリアック病も、食物アレルギーの一種と言えそうです。
どちらも食物アレルギーではありますが、一般に小麦アレルギーと呼ばれているのは、IgE依存性です。
IgE依存性とはつまり、即時反応するのが特徴で、小麦を摂取してすぐに、じんましんのような全身症状や、重篤だとアナフィラキシーショックで死に至ることもあります。皆さんのよく知る食物アレルギーです。
対してセリアック病は非IgE依存性で、T細胞が関与します。
小麦を摂取した結果、グルテン分子の一部が小腸上皮組織内に入り込み、それに対して免疫反応が発生し小腸を壊してしまいます。
なので、じんましん等の全身症状は起きず、消化管に関するトラブルに集中します。
セリアック病は、主食が米のためか日本では患者数が少ないようです。
が、欧米では1%程度の罹患率で、患者の総数としては結構な人数でいます。
そのため欧米ではグルテンフリーの食品コーナーがあったり、レストラン等でグルテンフリーを明記していたりするわけです。
非セリアック・グルテン過敏症
セリアック病でも小麦アレルギーでもないけど、グルテンでお腹の調子が悪くなる、という方もいます。
これは非セリアック・グルテン過敏症と呼ばれます。
また、セリアック病や小麦アレルギー等、グルテン関連のトラブルを総称して、グルテン関連疾患と呼びます。
メディアの功罪
上記のように、グルテンで何かしら調子を崩す方がいるのは事実です。
欧米では、そういった方向けのグルテンフリー食品は、メディアの宣伝もあり随分身近な物となりました。
一方で、グルテン関連疾患でないにも関わらず、「自分もそうなのかも」と思いグルテンフリー食品を選んでいる方が増加してしまったようです。
2009年から2014年の間に行われた、米国の疫学調査の結果では、5年間の調査期間中、セリアック病の有病率は変化がないにも関わらず、グルテンを避ける人の割合は3倍に上昇したようです。
メディアの宣伝や、マーケットの拡大により、グルテンフリーの食材が手に入りやすくなりましたが、一方でグルテンを避ける必要が無い人が、グルテンを避けるようになってしまいました。
日本でも、欧米のこれらの動きが輸入され、グルテン関連疾患や、グルテンフリーの健康法等が紹介されています。
特に、テニスプレイヤーのジョコビッチ選手がグルテンフリーの食事に切り替えて、調子がよくなったというのが有名な話です。
そういったところから、グルテンを抜くと体の調子がよくなる、体重が落ちる、腸の調子がよくなる、などというグルテンフリー健康法が紹介されています。
ジョコビッチ選手は、グルテン関連疾患だったため、グルテンを抜いて調子がよくなりましたが、だからといって日本人の大衆向けに、グルテンを抜くと調子が良くなりますよと宣伝するのは、ちょっと違うと思いますね。
日本でのグルテンフリー
食物アレルギーガイドラインによると、日本では小麦アレルギーの方はいますが、セリアック病の患者数は極めて低いとのこと。
日本でグルテンフリーの食事が必要な方はそう多くないと思われます。
ただ、日本でグルテンフリーの食事をするというのは、ある意味では食の欧米化からの脱却とも言えます。
食の欧米化に伴い、肥満などの生活習慣病が表立ってきたので、和食に切り替わるのは結果的には悪い事ではないかもしれません。
まあ、和食だろうが洋食だろうが、食べ方次第なんですが・・・、一般の方では、和食のほうが健康に良い食生活を送りやすいと思います。
まとめ
グルテンで調子を悪くする人は欧米ではそれなりの患者数がいて、グルテンフリー食品の需要も高いようです。
一方で、メディアの誤った宣伝により、グルテンフリーの必要が無いにも関わらず、グルテンフリーの食品を選んでいる人もいます。
日本では、もともとセリアック病の患者数は極めて低く、グルテンで調子を悪くする人は欧米よりも少ないと考えられます。
グルテンフリーの食事を試してみて、効果を実感できたなら続けていっても良いと思いますが、意味もなく食の選択肢を狭める必要は無いでしょう。
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