こんにちは!今日のテーマは、「身長ってなんだろう?」というテーマです。
何言ってるんだコイツ、と思われるかもしれませんが、身長って定義付けが実は難しいと思うんですよね。
ということで、自分の勉強も兼ねて執筆。
身長ってなに?
フリー百科事典のWikipediaによると、身長とは、「ヒトが直立した時の、地面から頭頂までの高さ」とあります。
なるほど、そりゃそうだ・・・、この一文に文句のある人はいないでしょう。
しかし、一つ問題のある文言があります。それは、「直立」です。
私は老健の管理栄養士なので、基本的に高齢者の栄養管理を専門に行っています。
高齢者のみなさんは、ピンと直立できる方ばかりではありません。むしろ少数です。
背骨が曲がっている方が大多数だし、そもそも立位をとれない方も多数です。
立位を取れて、それなりに直立できても、「昔はもっとあった」という方も多いです。
実は高齢者は身長が縮んでいっています。加齢とともに椎間板が薄くなったり、脊柱が湾曲したりして、直立できてもちょっと縮んでいます。
縮んだ状態で計測したものが身長?それとも縮んでいなかった時の状態が身長なのでしょうか?
さて、ふたたび先程の疑問ですが、「身長ってなんだろう?」という話です。
推定式を使えば良いのか?
直立した状態の身長が測れないなら、体の部位のどこかに身長と比例する部位があれば、そっちを測ればいいじゃないか、という考え方があります。
そこでよく使われるのが膝高と年齢から測定する方法です。
足を膝のところで直角の状態にして、踵から太もも前面までの長さを計測し、そこから推定します。
ただ、その推定式は複数あります。
Chumleaの式
男性=64.19+(2.02×膝高(cm))-(0.04×年齢)
女性=84.88+(1.83×膝高(cm))-(0.24×年齢)
宮澤の式
男性=64.02+(2.12×膝高(cm))-(0.07×年齢)
女性=77.88+(1.77×膝高(cm))-(0.10×年齢)
杉山の式
男性=115.3+(1.13×膝高(cm))-(0.12×年齢)
女性=123.9+(1.20×膝高(cm))-(0.40×年齢)
Myersの式
男性=53.69+(2.57×膝高(cm))-(0.23×年齢)
女性=69.10+(2.11×膝高(cm))-(0.22×年齢)
どれを使えばいいんだよ!とツッコミたくなります。いや、実際それが難しい問題なんですよ。
ネット上で膝高からの身長推定式を調べると、病院の勉強用資料や研修会資料が出てきますが、使っている式は統一されていません。
Chumleaの式を使っている病院もあれば、宮澤の式を使っている病院もあります。
でも本当だったら、日本人に対して一番妥当な式があるんじゃないの?それを使うべきなのでは?と思いますよね。
しかしこの分野については、残念ですがあまり研究が進んでいません。
研究が進んでいない理由の一つして、高齢者にとっての真の身長ってなんだ?という定義付けがされていないというのがあると思います。
高齢者は椎間板の減少や脊柱の湾曲により身長が縮んでいきますが、その縮んだ身長が真の身長なのか?それとも椎間板の減少や湾曲がない前提の身長が真の身長なのか?(つまり若い頃の身長)どちらなのか?という問題です。
縮んだ身長をとるか、縮んでいない身長をとるかで、目標体重や目標摂取エネルギー量が変わってくるのです。どちらが高齢者にとって良いのかは、私にもよくわかりません。
ちなみに、上記の式を自分自身と妻にお願いして代入してみました。
このような結果になります。
実年齢は測定時点で28歳ですが、仮に膝高が変わらないまま80歳になったら?ということでそちらも式に代入してみました。
宮澤の式が一番近そうな値でしょうか?誤差が大きい式もありますね。
高齢者へ適応するにはどの式が一番良いのでしょうか。そもそも高齢者の真の身長が何なのかわからないので、よくわかりませんね。
身長は頻繁に使われる指標
このように、計測しやすいようで計測し辛いのが身長です。
しかし、この身長という指標は、栄養管理の場面で様々な指標に使われます。
代表的なのは身長から算出されるBMIという値です。
BMI=22の値が標準体重とされているので、身長から標準体重(BMI22)を算出し、そこからエネルギーの推定式を使って必要エネルギー量や水分量を計算します。
しかし、こちらの記事でも書きましたが、"BMI=22が標準体重"というのも実はそこまで根拠がない話です。
よくわからない身長から算出されるBMIという値の、あまり根拠がないBMI22という値から算出されものが標準体重なわけです。
エネルギー必要量や水分必要量を算出するには、心許ないですね。
あくまで参考値
実際に活用する立場としては、身長も、身長から算出されるBMIも、そこから算出されるエネルギー必要量や水分量も、全て参考値にすぎないということです。
給与目標量の決定に、とりあえずの数字として必要なので計算してみますが、あまりアテにはできないのです。
実際には経過をみていって、体重の増減や脱水の所見があるかどうかで判断します。
エネルギー必要量も水分も、結果は体や採血にあらわれます。
痩せていけば足りていないし、太っていけば多すぎます。横ばいなら丁度良さそうだと判断できます。
まとめ
ということで、身長についての話でした。
身長とはなんなのか?「直立時の地面から頭頂までの高さ」でありますが、直立できない人の身長となると、途端にむずかしくなります。
膝高からの推定式等がありますが、膝高の測定も測定者の技量や、測定誤差等が発生するのでどれだけ信用がおけるか微妙なところです。
さらには、膝高を正確に測定できても、そのあとの式が複数あり、どれを使えばいいか定まっていません。
もう少し研究が進むと良いですね(他人任せですが)。
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