こんにちは!今日の更新は、イチョウ葉エキスについてです。
イチョウ葉エキスとは、イチョウの葉をアセトンやエタノール等で処理し、有害成分などを除いて濃縮した成分です。
この成分は、認知機能の改善に効果があると言われ、物忘れ予防や、認知症予防等にサプリメントとして飲まれています。
私は老健勤めの管理栄養士なので、しばしば使用している・気になっている利用者さんと出会います。
ということで、自習も兼ねて論文等を調べてみました。
イチョウ葉エキスは研究は比較的多い
サプリメントというと、ビタミンやミネラル等の微量栄養素サプリを除いて、胡散臭いものが多いイメージがあります。
イチョウ葉エキスもどちらかというと、胡散臭いイメージがあります。
なぜかというと、効果があると言われている認知機能障害は、非常に難しい病態です。
いくつか仕組みが解明されてきた認知症もあり、認知症に対する薬(アリセプト、レミニール、メマリー等)もあります。
しかし、実際に処方されている方々と話しても、あまり改善されているようには思えません。
医薬品は、健康食品であるサプリメントよりもはるかに高いレベルで研究・検討されていますが、それでも認知症の進行を食い止めることはできません。
そのような現状ですから、サプリメントを飲んだだけで認知症がなんとかなるとは思えません。
しかし、サプリメントの中では、イチョウ葉エキスは研究数が多い成分です。
それらの研究を引用して、機能性表示食品として届け出をしているサプリメントもあります。
研究が多い≠効果がある
イチョウ葉エキスは研究が多いのは事実ですが、研究が多い=効果があるというわけではありません。
イチョウ葉エキスの論文情報がまとまっているのは、国立健康・栄養研究所のイチョウ葉エキスのページや明治大学科学コミュニケーション研究所のこちらのページでよくまとめられています。
実際にイチョウ葉エキスを飲んでみて、認知機能改善に何かしらの効果があったという研究も出ています。
一方効果が出なかったとする研究も多数あり、評価が難しいところです。
明治大学科学コミュニケーション研究所では、RCT研究に基づくメタ分析をまとめていますが、以下のようにまとめています。
RCT研究に基づくメタ分析ではこれまで、認知症関連、統合失調症、脳卒中や脳梗塞、耳鳴り、間欠性跛行、狭心症、健常者の認知機能などへの効果が研究されている。結果として、耳鳴りや間欠性跛行、狭心症、健常者の認知機能に対してはおそらく効果がなく、統合失調症や脳卒中、脳梗塞に対しては部分的に改善効果とされるデータが得られているものの、そうでないとのデータもあり評価が難しい。認知症関連については、比較的一貫してADAS-cogスコアやSKTスコアなどいくつかの評価スコアに改善作用がみられ、若干の効果が期待できるかもしれない。
部分的には効果があったとするものもありますが、健常者の認知機能など、効果があると言い切れない部分もあるようです。
国立健康・栄養研究所では、記憶障害、耳鳴り、めまいの改善に対して有効性が示唆されているものの、最近の研究ではそれらの有効性を支持しないものがある、と評価しています。
また、アメリカ国立補完統合衛生センター(NCCIH)では、3000人規模の研究を行っており、その結果に基づきイチョウ葉エキスの効果に対して否定的な見解を示しています。
効果を全て否定するわけではないものの、効果がなかったとする研究も挙がっており、評価に悩むところです。
作用機序も不明
実際に飲んだ人を調べてもよくわかりませんが、そもそもイチョウ葉エキスがなぜ認知機能に効果があるのかも、よくわかりません。
サプリメント等では、血流改善や抗酸化作用により、認知機能を維持するなどと書かれています。
じゃあ血流改善をする薬(ワーファリン等)を飲めば認知機能が改善するのでしょうか?
脳血管性認知症の予防にはなるかもしれませんが、物忘れ防止に繋げるのは苦しい理論だと思います。
抗酸化作用に関しても、抗酸化作用を有する成分は世の中に山ほどあり、日常的に摂取しているわけです。
それら全てが認知機能を改善する効果があるなら、物忘れも認知症も、世の中からなくなっていて良いはずです。
効果があったとする研究も複数あるので、何かしら脳の認知機能に関与しているのでしょうが、何がどう作用しているかは解明されているとは言い難い状態です。
結論
イチョウ葉エキスは物忘れに有効か?というと、「よくわからない」というのが結論になります。
効果があったとする研究がある一方で、効果がなかったとする研究もあります。
作用機序に関しても、なぜ効果があるのが不明です。
まあ効果が感じられる人もいるかもしれないので、副作用が無ければ試してみても良いんじゃないかなあと思います。
ワーファリンなど薬との相互作用もあり、サプリのメインターゲット層の高齢者は、服用している方も多いので、注意が必要です。
また、血液の凝固作用を弱める効果があり(この作用を血流改善と謳っている)、出血の可能性がある手術前の服用はやめておいたほうが良いです。
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