こんにちは!今日の更新は、最近ニュースになった食中毒事件についてです。
内容はこちら。
だしパックの煮すぎが原因? 保育園の給食で食中毒 東京 産経新聞
ヒスタミン食中毒について、当ブログでも解説を上げました。魚に含まれるヒスタミンが原因で起こる食中毒です。
今回の食中毒に関して、都の発表では、だしパックを煮すぎた事で発生したとのこと。
そんな事例は初めて聞きました。本当なのでしょうか?ちょっと考えてみましょう。
ヒスタミン食中毒とは?
ヒスタミン食中毒とは、魚に蓄積されたヒスタミンという物質による食中毒です。
魚はヒスチジンというアミノ酸を含んでいますが、細菌の働きによりヒスタミンという成分に変わります。
鮮度が悪く、細菌が活動してヒスタミンが蓄積した魚を食べると、ヒスタミン食中毒が起こりえます。
このヒスタミンは、体の中にも存在する成分で、アレルギーに関与する成分です。
人間のアレルギー反応では、アレルギーの食品を食べたあと、肥満細胞からヒスタミンが放出され、じんましんのようなアレルギー症状が出現します。
食品から摂った場合も同様に、じんましんだったり顔が赤くなったり、アレルギーのような症状を引き起こします。
ヒスタミン食中毒はよくある?
厚生労働省の食中毒統計にヒスタミンの項目がありますが、1年あたり10件前後ぐらいの推移で発生しているようです。
ノロウイルスやカンピロバクターなど細菌・ウイルス性の食中毒では、1年あたり100件を超えるぐらいの件数が出ているので、そういった食中毒に比べると少ない印象です。
ヒスタミンの食中毒は、細菌が働きヒスタミンが生成されることによって起こります。
つまり、食品の品質保持技術が進歩した現代では、あまり見かけない食中毒です。
逆に、品質保持技術が未熟だった昔は多かったのではないかなと思います。
実際に、高齢者ではヒスタミン食中毒の経験者が多いです。
「アレルギーはありますか?」とお聞きすると、昔サバでじんましんが出た、というエピソードをお話されることがあります。
そういった例は、アレルギーというよりも、質の悪いサバにあたってしまい、ヒスタミン食中毒に至ったのではないかなと推察できます。
だしパックで起こり得るのか?
さて、本題ですが、今回発生した食中毒は、保育園で提供された「きつねうどん」でヒスタミンが検出されたとのことです。
都によると、メーカーはだしパックの煮る時間を10分としていたが、調理現場では45分煮ており、これが要因だったのではないか、とのこと。
都は「記載されている用法を守って欲しい」と呼びかけています。
いやー、そういう問題なんでしょうか…、非常に疑問です。
別記事の情報ですが、保存されていた食事を検査すると、きつねうどん全体では8mg/100g、きざみ揚げから20mg/100g検出されたそうです。
どちらもヒスタミンが検出されたようですが、一般的にはうどんや油揚げはヒスタミン食中毒は発生しない食品です。
一方、だしパックの未使用品からは5mg/100g未満が検出されたとのこと。実際に調理で使っただしパックは、廃棄されてしまっているのでしょう。
確かにだしパックからヒスタミンが検出されたようですが、だしパックは魚由来の素材も使用するので、微量のヒスタミンが含まれているのは不思議ではありません。
そして、5mg/100g未満というのはかなり微量で、ヒスタミン食中毒を起こすような量だとは考えにくいです。
日本食品微生物学会雑誌の報告によると、大人で22mg~320mgで発生の可能性があるとのこと。
子供であれば閾値が低い可能性もありますが、長時間煮出したからといって、食中毒になる可能性は非常に低いと思います。
そもそも保存食のきつねうどんから8mg/100g、きざみ揚げから20mg/100gということで、5mg/100gのだしパックから抽出されたにしては高濃度すぎるんですよね。
ということは、問題無いだしパックもあったけど、弩級ハズレの高濃度ヒスタミン含有だしパックがいくらか混ざっていたのではないかと。どうだろうね。
もしくは、一見可能性が低そうな油揚げが原因でしょうか。
ヒスチジンというアミノ酸は必須アミノ酸で、タンパク質を構成するアミノ酸なので、油揚げにももちろん含まれています。
なので、油揚げにヒスタミン産生菌が付着したら、もしかしたら産生するのでしょうか。
ヒスタミン産生菌は、海洋性細菌と、人や動物内にいる腸内細菌の二種類があるので、油揚げに付着しないとも言い切れません。
ただ、油揚げはたんぱく質の構成アミノ酸のうちにヒスチジンがあるわけで、その状態でヒスタミンに形を変えられるのか?というと変えられないような気もします。
魚でヒスタミン食中毒が多いのは、たんぱく質の中のヒスチジンではなく、遊離ヒスチジンとして多いから、反応しやすいので食中毒が多いのです。
ぱっと探した感じでは、油揚げの遊離ヒスチジンの検討は見つけられませんでしたが、油揚げ由来というのも可能性としてはあるんですかね。
ただ、いずれにしても、だしパックを長く煮たせいだとは、言えないと思いますね。
ちなみにヒスタミンは熱に安定の物質ですが、加熱したからといって増えていくわけではありません。
あくまで、もともとだしパックに含まれていたヒスタミンが、煮汁に移行しているだけです。
まとめ
個人的には、だしパックを長く煮出したのは関係なく、ただヒスタミンが多いだしパックがあった、というだけの話なんじゃないかと思っています。
もちろん、思ってもないところに食中毒の原因があったりするので、そうとも断定はできませんが。
少なくともご家庭では、だしパックをちょっと長く煮たからって、ヒスタミン食中毒を恐れる必要はないんじゃないかと思います。
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