こんにちは!今日の更新は、低ナトリウム血症は、食事の塩味が薄いせいなのか?というテーマです。
先日タイトルのような話を質問されたことがあります。
違いますよとお答えしていますが、なぜ違うのか自習も兼ねて書いていきたいと思います。
人間の塩分の必要量はとても少ない
人間にとって塩分(ナトリウム)は細胞の浸透圧管理に非常に重要な役割を果たしています。
血清ナトリウム濃度の基準値は135mEq/L~145mEq/L程度の範囲で、低ければ低ナトリウム血症、高ければ高ナトリウム血症となります。
軽度の低ナトリウム血症ではほぼ無症状ですが、高度な低ナトリウム血症では昏睡やけいれん、死に至ることもあります。
そんなナトリウムですが、実は人間の必要量は驚くほど少ないのです。
実はナトリウム摂取量の下限というのは、不足することがほぼ無いため十分に検討されていないのですが、WHOのガイドラインによると、わずか200mg~500mg/日と推定されると記載されています。
食塩になおすと1g程度の量です。味噌汁でいうと一杯弱といったところです。非常に少ない量ですね。
日本人の食事摂取基準では、不可避損失量(尿や便、皮膚等から自然に排泄される量)から推定されています。
その数値も、ナトリウムで600mg/日、食塩で1.5gの量です。
最近の日本人の塩分摂取量は、厚生労働省の国民健康栄養調査にて調査されていますが、10g程度摂取しています。
つまり食事が多少薄味なぐらいでは、人間に必要なナトリウム量を下回ることはなく、低ナトリウム血症を引き起こす際は大体が違う原因である、ということです。
もちろん、食事が極端に偏っていたり、果物しか食べないダイエットをしていたり、そういった特殊な例では食事が原因の可能性もあります。
なぜ必要量がそんなに少ないのか
ナトリウムの必要量がこれほど少ないのは、動物の進化によるものです。
ナトリウムは人間だけでなく、動物に必要不可欠な物質です。
肉食動物であれば、他の動物を狩った時に、含まれる塩分を摂取することができます。
草食動物はどうするのかというと、草にはナトリウムが含まれないため塩分の確保に苦労します。
海があればナトリウムがいくらでも摂取できますが、内陸ではそうはいきません。
内陸に生息する草食動物は、塩が析出した岩石を舐めたり、塩を含んだ土を探したりして塩分を確保しています。
もちろん、そんな場所が毎日安定して見つかるわけではありません。
そんな中でもナトリウム不足に陥らないように、ナトリウムを再吸収しながら、上手に使い回す仕組みが体に存在します。
これは人間も同様で、腎臓がその役割を担い、ナトリウムを上手に使いまわしています。
低ナトリウム血症を起こすのはなぜ?
それほど塩分の必要量が少ないのに、低ナトリウム血症を起こしてしまうのはなぜでしょう。
原因は疾病か、薬の副作用かの2つに分かれます。
先程腎臓がナトリウム保持の役割を担っていると書きましたが、腎機能が低下し、ナトリウムの保持能力が低下すると、低ナトリウム血症に至ることがあります。
下痢や嘔吐、もしくは大量の発汗等、排出が極端に増加した場合にも、低ナトリウム血症となることがあります。
さらに、精神病で水を飲み続ける病気がありますが(多飲症)、そういったものや、ホルモン異常によって引き起こされることもあります。
幅広い病態から低ナトリウム血症が引き起こされるため、ナトリウムの数値以外の情報も合わせて原因を考えていく必要があります。
また、薬の副作用として低ナトリウム血症に至ることもあります。
サイアザイド系利尿薬やループ利尿薬はナトリウムの排泄を増加させるので、低ナトリウム血症を引き起こす可能性があります。
他にもSSRI、SNRIといった薬も、低ナトリウム血症の要因となるようです。
いずれにしても、疾患、服薬、生活の状態等、複合的に評価をする必要があるため、専門的知識が求められます。
まとめ
食事の味が薄かったり、多少摂取量が落ちたぐらいでは、まず低ナトリウム血症に至ることはありません。
体の機能が正常なら、ナトリウムが少量でも上手に使い、機能を維持することができます。
よって、低ナトリウム血症に至った症例では、疾患や服薬に原因が無いかをよく確認する必要があると思います。
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